「丸の内センターだより」'99-9

  9月25日に歌劇 'La Boheme'を横浜まで見に行きました。座席は3階で、舞台を見
下ろす位置になります。時代は1830年頃のパリ、4人の芸術家の卵達と2人の女、出
会いと愛憎と別れを描くストーリーです。ところが舞台装置はどう考えても1960年代
。高架線や乗用車のタイヤ、居酒屋の看板に付けられた電球といった小道具が1830年
代に存在するわけがありませんものね。僕にとってこのギャップは戸惑いましたが、
少しずつストーリーや演技に引き込まれていき、最後は小道具など無視して舞台の役
者1人1人に見入ってしまいました。
  白葉先生は音楽家ショナールの役で登場。3階席からは小さくて見えにくかったの
ですが、歌声ですぐに分かりました。舞台だからこそ着られるど派手な彩色の衣装と
きつい目の化粧にはびっくりしました。

  今回は前回の続きで、「漫画」について。
  前回は現在自分の好きな漫画について書きましたが、今回は自分の生い立ちと漫画
とのかかわりについて記します。
  皆様も小さい頃はテレビアニメとかを見て育ったことと思います。そのヒーローや
ヒロインに憧れ、主題歌を覚え、親にキャラクターグッズを買ってもらって喜んだ、
というのは、おそらく皆様に共通の経験でしょう。
  僕の場合、昔からテレビは見ない方でしたので、あまりそういう経験がありません
でした。周りがガンダムブームになったときでも、我関せず、といった調子で一人、
自由帳に電車の絵を描いていた毎日でした。
  そんな僕でも唯一、毎週のように楽しみにしていたアニメがありました。
  それが「ドラえもん」です。
  四次元ポケットからいろいろな魔法の品々を取り出して、あんな夢、こんな希望を
かなえてくれるドラえもんは、まさしく子供時代に唯一憧れだったキャラクターでし
た。出演者の構成も、自分の子供時代に似たところがありました。のび太は自分自身
であったし、ジャイアンやスネ夫のような奴もいたし、しずかちゃんのような素敵な
女の子もいたし。自分の身の回りの環境をトレースしながら、ドラえもんのようなキ
ャラクターがいたらなあ、とひそかに思っていたわけです。
  だから、ドラえもんだけは毎週テレビで必ず見るようになりましたし、単行本も1
冊ずつそろえてゆきました。他のアニメに見られる戦闘シーンがなかったので、これ
だけは長続きしたのかもしれません。
  やがて成長するにしたがってドラえもんからも卒業して、ベストテンなどの歌番組
に熱中するようになり、アニメや漫画など見ることもなくなりました。
  僕が再び漫画に出会ったのが大学時代です。部室に置いてあった漫画週刊誌を読む
ようになり、その作品の1つ1つに、子供向けアニメとは違った感動を覚えるように
なったのです。それだけ大人になった、ということでしょうね。世の中の動き、あん
なことこんなこと、その意味が漫画雑誌を通しても分かってきたのですから。
  漫画の立ち読みを始めるようになったのもこの頃です。そして月曜のジャンプ、水
曜のマガジンは必ずチェックするようになり、現在に至っています。

  夏合宿の飲み会で子供時代のアニメの話で盛り上がり、周りが主題歌を何曲も合唱
しても、僕にはその曲がわからないのでついていけず、もっぱら聴いているだけでし
た。こういうとき、もっと子供時代にアニメを見ておけばよかったなあ、と後悔した
りします。でも大人になって今さら子供向けのアニメなど見る気もしないし。
  そんな中、2〜3年くらい前から「こち亀」のTVアニメ版の放送が始まるように
なりました。原作が面白いだけにTV版もやはり期待を裏切りません。放送開始以来
毎週日曜日はなるべく早く帰宅するようにしています。「こち亀」を見るために。

  さて、話を漫画に戻します。前回も書いたように、日本には現在数多くの漫画が存
在します。そしてその多くはTVアニメになったり、ドラマになったり映画化された
り。現在の日本文化の大半は漫画によってつくられているといっても過言ではないと
僕は思います。今夜は会社から持って帰った漫画雑誌を読みながら、日本の漫画の将
来に乾杯することにしましょう。

                     平成11年10月9日