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旅行記 「目指せ、道の果て」

Vol.2 中国山地のローカル線ツアー'06

 旅行記のコーナー「目指せ、道の果て」ですが、筆者多忙を理由にしばらく書いていなかったら、1年近くも間が空いてしまう始末に。これはあまりよろしくないので、久しぶりに少し暇ができたところで、この夏のツアーをお届けしようと思います。では。

 関連コラム 8月5日分

平成18年9月23日更新

(0日目:7月27日(木)〜1日目:28日(金) 前編)

 今回は青春18きっぷを3回分使用するツアーで計画。行きは夜行出発とし、安くてかつリクライニングが深く倒れる夜行バスを選択した。急行<銀河>の寝台は高いし、快速<ムーンライトながら>はリクライニングがあまり倒れなくて眠れない。バスを選んだのは必然的な流れであった。
 出発日27日は、昼間は1日準備にあてた。前日まで多忙なスケジュール、ようやく取れた夏休み。出発直前まで準備に追われた。ホテルのやバスの予約をネットで取る。バスの空席は路線によってかなり残っている。乗り換え列車の都合を考えた結果、京都・高槻方面行きのバスにして山科で下車することに決定。1点気がかりなのは、目的地のローカル線で先日の大雨による一部不通区間が残っていること。ぎりぎりまでコースの検討を繰り返した。
 蓮田21:56発の電車で新宿に向かう。新宿まで約40分。まずは順調な滑り出し。

 新宿(西口バスターミナル)23:00 京阪バス「東京ミッドナイトエクスプレス京都号」 大阪200 か 1443

 バス出発15分前に新宿西口バスターミナルに着いた。目的の枚方行き夜行バスがちょうど進入してきた。
 指定されたのは運転室すぐ後ろの窓際の席。リクライニングはJRのグリーン車以上に深く倒れ、快適な寝心地を提供してくれるだろう。
 夏休み中にもかかわらず乗客は約数名と少なく、かなり拍子抜けした感。
 23:00出発。シートベルトはしっかり締めておく。昨年の尼崎脱線事故に隠れて目立たなかったが、その事故の2日後に夜行バスが横転して乗客が投げ出され3人が死亡した事故が起こっている。こういうことがあると思うとあまりしゃれにならない。
 新宿から渋谷まで、渋滞にまかれながらゆっくりと進む。渋谷発は23:30。かなり余裕を取ってある。渋滞を見越して設定しているのだろう。
 渋谷は西口近くのマークシティが発着場所となる。スロープを上ってビルの2階に入り、ここのバス回転場で停車。2人が乗ってきた。
 渋谷を出るとすぐに首都高に入り、トラックの群れと併走する。間もなく運転室後ろのカーテンが閉められ、室内灯も消されて完全に真っ暗な空間となる。明日に備えていざ休息に入る、手はずだが、なかなか寝付けない。
 バスのエンジン音が高鳴ってきた。東名高速に入ったようだ。窓のカーテンを少し開けると、広い片側3車線の道路。後ろからトラックが次々追い抜いてゆく。バスの宿命か道路の継ぎ目ごとに揺れが激しいが、ドンと突き上げるような揺れではなく、空気ばねが受け止めているのか、ゆりかごを小刻みに揺らしたような感触だ。
 エンジンの高鳴りの割にスピードが落ちてきたようだ。そろそろ御殿場への峠越え区間に入ったらしい。
 峠を抜け、エンジン音が静かになったかと思うと、バスはスピードを落とし始めた。サービスエリアで運転手交代の休憩か。
 カーテンを開けると、足柄SAに入っていくところだった。時間は0:50頃。駐車場にはおびただしい数のトラックが休んでいる。その一角に高速バスが群れをなしていて、この中に入れてもらっている。10分の小休止。こんな夜中でもたくさんの観光客がSAの中を行き交っている。元気なもんだ。
 この後、浜名湖SA、多賀SA(滋賀県)と約2時間おきに運転手交代の休憩があった。多賀SAまで来ると日の出時間近くとなり、辺りがもう明るかった。
 結局あまり良く寝付けないまま、下車地の山科駅に到着した。到着予定5:46に数分早い到着だった。

 バスはあっけなく、次の目的地の京都・枚方方面に去っていった。人っ子ひとりいない早朝のベッドタウンに取り残されて、少し寂しさを感じる。
 駅に向かう。窓口は開いていて、ここで青春18きっぷを手に入れる。早朝から窓口が開いているのはさすがは拠点駅だけある。

 山科5:52 903M 普通 クモハ223-2035
 ホームに上がって電車を待つ。思っていたのと逆の方向から電車がやってきた。どうやら方向感覚が狂ったらしい。
 この電車に1区間だけ乗車して京都へ。次の京都が終点だ。所要約5分。デラックスな内装の快速形電車223系は、いつでも憧れの的だった。車内はかなり空いていて、ゆったり空間を、わずかな時間であるが楽しむ。
 京都は米原方面に向かうホーム、2番線に到着した。大阪方面には行かずここで折り返すようだ。

京都にて

 京都6:10 705M 快速 モハ220-20
 次のランナーも豪華快速形221系の8両編成だが、大阪方面は早くもラッシュが始まり、立ち客大勢の状況。筆者も座席にありつけず、大阪まで荷物を床に置いて立つ。
 京都から大阪への道のりは旅行でもう何度通ったことか。あの「電車でGO!」のCGの風景がそのままに展開される。それにしてもあのゲームは風景描写が良くできているなあ、と改めて感心する。複々線を併走する7両編成の普通電車のうち1両は、今の時間は女性専用車になっている。他の車両に比べて明らかに空いている。
 大阪には6:45着。駅構内は乗り換えの通勤客で混雑が始まっている。環状線ホーム京橋寄りの立ちそば屋で朝食とする。冷やしおくらそばに揚げ玉をたっぷりかけて、まずはご満悦。通勤電車に混じって寝台急行や回送機関車が到着し、鉄道ファン仲間が盛んに撮影している。

 大阪7:14 2531M 普通 クハ111-5564(旧番564)
 大阪からは福知山線の電車に乗る。先日東京発着の列車から撤退した113系だが、ここ大阪では今も日常的に走っている。しかも内装を223系と同じレベル、転換シート付きにした豪華快速形仕様で、すっかり見違えるようだ。カラーリングも淡いクリームと窓周り薄茶の2色塗りで、ネット上で「カフェオレ色」とは誰が付けたかうまいネーミングだ。

川西池田にて

 尼崎を出て東海道線を乗り越し、右左に急カーブを切ると、あの事故現場である。マンションの下に地蔵が建立されているのが見える。2度とこのような大惨事がおこらないように、小さく祈りをささげた。
 宝塚まではベッドタウンをゆく。反対方向からくる電車と頻繁にすれ違う。通勤ラッシュの光景。途中で阪急宝塚線が近づき、茶色い電車と競走する。
 宝塚を出ると一転して山の中、長いトンネルを突っ切る。ここは20年前の電化で新線に切り替わった区間。それまではディーゼル機関車が急行形客車を引っ張り、渓谷に沿って走っていた。トンネルの中でも乗客を満載した上り電車と頻繁にすれ違う。
 トンネルを抜けると景色はおだやかになる。神戸電鉄の発着する三田から先はゆったりとした日本の田舎の風情。しばし緑いっぱいの車窓を楽しむことにしよう。バスの中で寝付けなかったのが、今になって睡魔が襲ってくる。篠山口から先、隣に流れる篠山川は渓谷となり美しいが、先日の大雨で並行道路が土砂崩れに埋まっていた。恐ろしい。

 谷川9:00 2324S 普通 クモハ125-10
 5分の待ち合わせで加古川線に乗り換える。最新のローカル用電車クモハ125形の1両編成。車内は223系と同じ転換シートの豪華仕様だが、座席が2人掛けと1人掛けの3列になっており、通路が広い分座席の絶対数が少ない。インテリアは223系などのシックな茶色と違い、赤桃色主体の明るいカラーリング。
 谷川から西脇市にかけては山の間の里をゆくが、沿線人口が少ないようで、2〜3時間に1本しか電車が来ない。乗っているこの電車も乗客数は片手で足りるほど。それでもつい先日大金をかけて電化したのは、近畿圏のローカル用気動車を電車に統一することによる運用コスト削減や災害時の迂回ルート確保の理由と聞いた。
 西脇市に 9:27に到着する。到着直前に右手から鍛冶屋線の廃線跡遊歩道が合流する。西脇市の中心部を通っていたローカル線だったが、16年前に廃止されてしまった。廃止とともに「野村」だったこの駅名は、現在の「西脇市」と名前を変えている。

谷川にて

 西脇市9:46 1332S 普通 クモハ103-3557(旧番モハ103-730)

西脇市にて クモハ102-3557(旧番モハ102-886)

 ここから先は1時間に1本に増える。車両も大阪環状線などで走っていた中古の103系通勤形車両にバトンタッチする。中間車に運転台を付けた2両編成でちょこまかと走る。沿線もかなり開けてきて、山が遠ざかっていく。丘を登ったり下りたりを繰り返す。
 粟生(あお)では第3セクターの北条鉄道線の小型気動車と、準大手私鉄の神戸電鉄線の通勤電車が顔を合わせる。厄神では三木鉄道線の小型気動車とも会い、通勤とローカルの2つの素顔がうかがえる。厄神からは30分おきの区間。住宅が建ち並ぶ。
 終着の加古川は高架駅に生まれ変わっていた。加古川線から東海道線に乗り換える際は中間改札を抜けなければならない。加古川線内には無人駅が多く、この各無人駅からの乗車対策で設置されたようである。

 加古川10:36 3427M 新快速 モハ223-2001
 姫路10:56 737T 快速 モハ220-15
 網干11:16 3429M 新快速 クハ222-2026
 相生11:26 1315M 普通 クハ115-1070

223系2000番台の内装。西日本エリアの幹線用113系や115系も多くがこれと同じインテリアに改造されている。転換シート装備の豪華快速形仕様。

 上郡で接続する特急列車までの間、できるだけ多くの車両に乗ろうという訳で、4本の列車を短区間で次々に乗り継いだ。加古川から223系、姫路で221系、網干でもう1本223系、相生で115系。いずれも転換シートの快速形仕様で、乗り比べを楽しんだ。ただ、最後の相生発だけは3両編成で、岡山方面に向かう18きっぷユーザーとおぼしき旅行客で大混雑。筆者は上郡で降りたのでまだ良かったが、このまま岡山まで1時間も立席は肉体的にきついものがあるだろう。

 後編に続く

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